IPアドレスに関するプライバシーについてです。これはあくまでもIPアドレスについてであって、他に様々なプライバシーの懸念があることをお忘れなく。
結論から言えば、IPアドレスは、それほど大きなプライバシー問題ではありません。しかし、一応、どのようなものかは解説してみます。
IPアドレスとは何か
アドレスは読んで字のごとく「住所」です。あなたのスマフォやパソコンに住所がつけられており、閲覧しようと思うウェブサイトにも住所があります。こちらの住所から、「これこれを見たいんだよ」と、あちらの住所にリクエストし、返答がこちらの住所めがけてやってくるわけです。双方に住所が無いと、何のやりとりもできなくなってしまいます。
ただ、普通はこんなこと意識しませんね。ウェブサイトを見るには、「https://fp.no-sheep.org」とか入力すれば良いのですが、実はこれが自動的に「133.18.205.41」という住所に変換され、そこをめがけてリクエストが送信されています。この番号は実際の住所であり、ほぼ固定しています。
こちら側の住所としても、全く意識に登りませんが、自動的に何かしらの番号がついています。123.123.123.123などですが、ほぼ固定しているウェブサイトの方とは異なり、こちら側は状況によってころころと変わります。
ともあれ、上の場合、133.18.205.41と、123.123.123.123という住所のあいだでキャッチボールがされるわけです。「これが見たい」「はいこれ」「あれが見たい」「はいあれ」と言ったようにです。
アクセスの種類によって異なるこちら側のIPアドレス
細かいことを言うと本当は違うのですが、話を簡単にするために、ここではグローバルIPアドレスに限ります。
こちら側のIPアドレスは状況によってころころ変わると書きました。実際に、あなたが家庭内のLANに接続しているとき、携帯ネットワークを使っているとき、カフェや電車のWifiに接続しているときには、あなたのIPアドレスは全く違うものになります。
また、家庭の、例えばフレッツ光のような固定ネット契約の場合でも、IPアドレスは実際には固定ではなく、おそらく数時間、数日経過すると別のものに変ってしまいます。
さらに重要なこととしては、あるWifiに複数の人、複数のスマフォやパソコンが接続していると、それらのIPアドレス(あくまでもグローバルIPのこと)は、すべて同じになります。
これは、家庭のWifiでも同じですし、小規模なカフェやホテルなどでも同じです。そのWifiの中では、すべてのスマフォ、パソコンが同じアドレスになります。
携帯ネットワークの場合には、個々人に付される場合と、その携帯加入者全員で一つになる場合とがあるようです。後者の代表的な例としてはUQです。UQにおいて個々人に付してもらうには追加料金が必要になります。
こちらのIPアドレスで相手側にわかること
IPアドレスにおけるプライバシー上の懸念点としては、アクセスしている相手側にそれがわかってしまうことです。これは当然です。「これこれを見たいのでください。私の住所はここですからね」と言っているのですから、相手側に住所を教えないと話になりません。
しかし、こちら側のIPアドレスの種類によっては、相手側に情報を与えてしまう可能性があることです。
最も危険なのは、家庭や職場で契約しているフレッツ光などの固定ネット契約です。これらの固定ネット契約では、「123.123.123.123」などというIPアドレスだけで、市町村単位の場所がわかってしまいます。もちろん、カフェやホテルのWifiも同じ状況にありますが、不特定多数が使うものなので、問題にはなりません。
また、携帯ネットワークなどは、そもそもIPアドレスだけでは場所の特定は不可能ですから、個別のIPアドレスが個々人に割り振られていようが、携帯会社全体で一つだろうが、問題にはならないでしょう。
ただし、国内のすべてのIPアドレスに言えることですが、日本国内であることはわかってしまいます。
市町村単位で場所がわかることを危険と見るか、気にしないか
ですから、ここでの最大の脅威としては、家庭や職場の接続の場合に、向こう側が市町村単位で場所が把握できることです。これを危険と見るか、大したことないと見るかは、おそらく状況によるでしょう。
他の人が滅多に使わないような、何かしら特殊なサービスが頻繁に使われる場合、これが同じ市町村からであれば、同一人物とみなされる可能性が大きいでしょう。
例えば、Googleにログインせず、Googleのクッキーも拒否している状態で、Google検索において、普通の人が滅多にしないような語句の組み合わせを家庭から行えば、同一人物とみなされる可能性は高いと思われます。
しかしこれは、100%確実ではなく、推測でしかありません。また、この情報をGoogle側が利用しようと思えば、検索だけでは無理でしょう。他の何らかのサービスにおいて、同じ市町村からのアクセスがあった時に何らかのアクションが起こせるかもしれないという程度です。
このあたりを危険と見るか、大したことないと見るか、あるいは決してそんなことしないと思うかは、個々人によることでしょう。
VPNによる解決策
何にしてもVPNを使えば、これらの懸念点はなくなります。商用のVPNを使った場合、以下の利益があります。
- VPNの出口は、そのVPNサービスのユーザが共用している。つまり、不特定多数の者が同じIPアドレスとして現れるため、アクセス先では(IPアドレスだけでは)個々人を識別することは絶対に不可能。
- カフェのWifiなど、Wifi管理者が自由に盗聴ができる環境でも、VPN出口までは完全に暗号化されるため、安心してどんなWifiにも接続できる。「そもそも盗聴を目的とした野良Wifi※」であっても問題無い。
※最初から情報を盗む目的で仕掛けられた、パスワード無しで接続できるようなWifiです。滅多にありませんが、一応ご注意を。
ただし、他者のWifiに接続する場合の注意点としては、MACアドレスによる識別があるんですが、しかしこれも、「同じ人が同じMACアドレスとしてWifiに現れる」のであれば、単になじみ客の顔を覚えるのと変わりがありません。MACアドレスがプライバシー侵害につながるのは、かなり特殊な状況と言えるでしょう。